EL34 AB級PPアンプ製作の部屋
 2024年3月に定年してから、中国の青島というところで仕事をしております。以前に比べて自由になる時間が 格段に増えました。仕事量が少なくなったというよりは、圧倒的に雑用が減少したことが影響して いると思います。日本での仕事では自分の役割に加えて、役割と役割の隙間も誰かが仕事をしなければならないことがしばしばあります。 そのようなことで仕事量が多くなるのでしょうか。海外で勤務して思うことは、そのような気遣いがなくてもそれなりに仕事は回る ものなのだということです。
 定年する前に、トランスを買い込んでいました。それは、PPアンプを組むためのセットと300Bシングルアンプを 組むためのセットです。出力トランス、電源トランスおよびチョークトランスです。日本の自宅のベッドの下で ひっそりと眠っています。歳をとるごとに体力や気力が減退してきます。近いうちに作製に取り掛からなければお蔵入りして、 そのうちヤフオクで売れと言われると容易に想像されます。現物は日本にありますので、実際の作成は今後のことになりますが、 設計だけなら中国いても可能ですので重たい腰を上げて設計図を書いてみました。秘蔵して いるトランスはISOと呼ばれるTANGOを引き継いだ会社のものです。出力トランスはFC-60-5です。これは旧タンゴ のXE-60と同等のものです。出力は60Wでインピーダンスは5kΩです。今度はEL34を使ったPPアンプでAB級のものを想定し ています。AB級にしたのは、今まで全段差動増幅に拘ってきたのですが、もう少し大きなパワーでスピーカーを鳴らしてみたいと 思っているからです。出力管と出力トランスが決まりました。次は接続の問題です。5極管接続か、UL接続か3極管接続 を選択する必要があります。メーカーの出力特性などをみているとやはり3結が素直で良いように思います。歪みなどは PPアンプとなることからある程度抑え込めるのですが、プレート抵抗なども低く設定できるので3結としました。 アイドリング状態での電流と電圧の設定をしなければならないのですが、電源トランスはMS3228ですので電流の 制限があります。これは旧TANGOのMX-280と同等品ですB電源は280mA取れます。Siダイオードでは260mAとなります。 出力管1本あたり50mA流すとそれだけで200mAとなります。初段と中段で30mAくらい必要です。これらを考慮して 出力管1本あたり50mA、350Vということにしました。

Mullardの規格表から図を切り出してロードラインを描いてみました。グリッドバイアスはカソードに対して-27.5Vが適正ということになります。 今回は固定バイアスを採用することにました。そこで、ツェナーダイオードを使い-43Vを作り抵抗で電圧を調整して作ることにしました。出力管4本 それぞれ独立に設定するようにしました。回路図は次の図に示します。

初段および中段は6SN7を使い差動回路にしました。定電流はLM234というレギュレーターを使います。今までこれを使い不都合はありませんので、今回も 採用します。初段と中段は直結します。中段のプレート電流は初段の偏りにより大きく左右されるので、初段のカソードにVRによる可変回路を採用します。 交流的に短絡するために1800μFの電解コンデンサーを使いました。中段から増幅管へはバイパスコンデンサーを使う予定です。0.33μFとしてあるのは Black Beautyのフィルムコンデンサーをたくさん所有しているので、それを使いたいからです。大体CRが固まりました。RSというオンラインストアーで 必要なものを注文しました。100kΩAカーブの可変抵抗は入手が難しそうですね。TOCOSでは今でも製造しているのでしょうか? Bカーブのものはどこでも買えそうですが、Aカーブとなるとなかなか難しそうです。次に帰国した時に秋葉原で調達するつもりです。以前EL34PPアンプを 作った時にオーバーオールで少しだけNFBをかけました。これでダンピングファクターの改善を図ったという記憶がありましたので、 今回も採用しております。波形を調べながら最終的にはどうするかを決める予定です。 シャーシはタカチ製のSL-10Gというものです。以前KT88のPPアンプを作った時と同じものです。だんだんと気持ちが入り込んできます。早くとっかりたくて ウズウズしてきました。次回は2月の末に帰国しますので、その時に着手したいです。

 B電源について再度調査しました。TangoのMX-280をSiダイオードで整流した場合、280V端子出力ではタンゴのトランスデータから370Vと読み取れること、 過去の実験結果の記憶から、372Vと設定して計画しました。中国に持ってきたKT88PPアンプの電源を繋いで出力電圧のテストをしました。 このトランスはISOのMS3228であり、EL34で使うものと同じものです。その結果、 250mA負荷をかけた場合340Vとなりました。そこで全面的に回路の見直しをしました。今度は初段から積み上げる形で考えてみました。 まず、初段ではB3に125Vを供給した場合はプレート電流が2.5mAでプレート抵抗が22kΩなので初段のプレート電圧が概ね70Vとなります。中段とは 直結することから70Vの電圧を嵩上げして考えます。B2を300Vに設定して6SN7の動作直線を調べてみました。(下の図です)

まず初段について青色で示します。125Vを起点として22kΩのロードラインと2.5mAの交点からバイアスが-1.7V程度と読み取れます。 次に、300Vから嵩上げ分の70Vを差し引いた230Vを起点として22kΩのロードラインを引きます。赤色で示してあります。4.6mAとの交点が動作点となります。 そこでのバイアスは-4vとと読み取れます。0Vから-8Vまでスイングした時は72Vから170Vとなり、概ね100Vくらい出力できるので十分EL34をドライブできると 思います。EL34の動作についてですが、当初350Vで50mA程度を考えていたのですが、B1電圧が320Vとなると、トランスでの電圧降下を考えると 290Vあたりとなります。50mAにするためにはバイアスがかなり浅くなり-22V程度となります。それを踏まえて固定バイアスの回路の抵抗値を変更しました。

別の選択肢としては280Vの端子から320Vへ変更することも考えられまが、とりあえず280Vで設計します。プッシュプルの回路では交流負荷がトランスインピーダンスの 半分となりますからA級動作では本来は2.5kΩとなり、さらにB級では1/4となり1.25kΩとするべきと教科書に書いてあります。浅学ゆえに完全に理解できて おりません。ロードラインは直線ではなく曲線になるようです。考え方のベースとして5kΩのロードラインだけ引いてありますが、EL34のロードラインは あまり実態を反映していないようです。A級からAB級さらにはB級へと遷移していく時はどのように解釈するのか?・・・奥が深いです。
 帰国したので早速アンプ作製に取り掛かりました。まずはフロントパネルとリアパネルの穴あけをしました。その後レタリングを施しクリア塗装しました。 天板とサブ天板パネルは以前FX-40というトランス仕様に作ってもらっていたものをFC-60用に再加工しました。サブパネルに取り付けるGT管ソケット、ラグ板 ブリッジダイオード、3端子レギュレーターおよびコンデンサバンドのネジ穴を開けました。

天板とサブ天板を本体に設置してさらにトランスを載せました。大変重たいので重労働です。いつものお遊びですが、出力管の袴部分を橙色のLEDで照らす仕掛けもしました。 天板と本体を止めるサラネジは金メッキの特注ネジにしました。天板がシャンペンゴールドなので気に入っています。

ここでやめておくつもりでしたが、我慢できずに配線を始めてしいました。今回の帰国では確定申告やらやらなければならないこともそれなりにあったのですが、 ついつい、楽しいことを優先さんさせてしまいました。ここまででタイムアップです。

青島便は羽田から飛ぶので、帰る途中東京の自宅により、在庫部品を漁っていたらJANの6NS7が見つかりました。ずいぶん昔に入手していたのですが、すっかりと失念しておりました。 このアンプの初段と中段に使うつもりです。なんだか得した気分で嬉しかったです。



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