Marantz Model7 KCXXI(21) の作製
モデル7のクローンをたくさん作りました。ホームページを見てくださった方から連絡をいただき 作成依頼をうけて何台か作りました。レバースイッチまわりについて以前から改善したいと思っていました。 東測のレバースイッチは良いのですがもう少し頑丈でレバーが太いものを探していました。Fenderのストラトキャスター用の スイッチは最適なのですが、2回路しかありませんから、Hiフィルター、Lowフィルター、Tape monitor切り替え用のスイッチとしては DM-30という製品が使えます(左下の図です)。
問題はPhono Equalizer用です。3接点で6回路があれば問題ありません。東測製のものが使えますが、 レバーの幅や長さが短いのでレバースイッチノブがフィットしません。調べているうちに3接点4回路のものを見つけました(右上の図です)。これが使えたら 良いと思い、回路図を見直してみることにしました。 レバースイッチを使ってNFBのコンデンサーや抵抗を切り替える部分です。モデル7の回路図からRIAA, old Col LPおよびold 78について 回路を書き出してみました(左下の図です)。 大変巧妙に作られています。基本的な骨格はRIAAですが、oldColLPでは1.6nFのコンデンサーに820pFが並列に付け加わり、 680kΩの抵抗には560kΩが付け加わります。old78では1.6nFの代わりに1nFと820pFの直列ユニットが選択されます。 1nFと820pFの直列接続は450pFとなります。なぜこの様なデザインになったのか不明です。もしかすると1.6nF, 1nFや820pFの容量のものは 入手しやすかったからかもしれません。片側2回路しかないレバースイッチでこれと同等の機能を持たせる回路を考えてみました(右下の図です)。
どうしてもこの回路で作ってみたくなりました。とうとう作成を開始しました。今までとの変更点は2.42nFや1.6nF, 620pFのコンデンサーをどうするか です。2.42nFは2.2nFと220pFの合成で、また620pFは150pFと470pFの合成で作りました。1.6nFは1.5nFと100pFで作りました。1.6nFはRIAAでは大変重要なので 選別して精度の高いものを選びました。
以前に作ったモデル7とマッキントッシュc-22のイコライザーアンプの聴き比べをしようとしていました。 少しだけ聞きました。マッキンの方が大人しい個性のない感じがしていました。もう少しいろいろな音源で試してみたいと 思っていた矢先に、コロナの影響でメキシコに赴任していた息子夫妻が東京の自宅に避難してきました。サブシステムの置いてあった 部屋は占拠されてしまい、聴き比べができなくなり頓挫しています。そんな折に、コンデンサーだけ繋いで1.6nFの精度の高いものができたと 喜んでいただけではどうにも満足できません。仕事もズーム会議などで自宅で過ごす時間が増えたこともあり、またまた本格的に制作を開始してしまいました。
いつものことですが、最初にメインボード、ブロックコンデンサー用ボード、電源トランスという順で作り進めました。 気がつくとこのアンプが21番目のクローンとなっていました。なんだか馬鹿の一つ覚えの様で恥ずかしい気もします。 幸い在庫をしらべたところコンデンサー類も全て揃いました。ケースの加工も終わりましたので、フロントパネル周りの 部品を取りつて行きます。レバースイッチ周りの半田付けは入り組んでいるので、パネルをケースに取り付ける前に 済ませておくとスムーズです。
ここまで作ったところで、メインアンプの作成依頼がありました。イギリス人の友人から頼まれました。在庫部品など考慮すると 以前に何台か作った300Bのトランスドライブシングルアンプが良いと提案したところ、是非と頼まれてしまいました。そんなわけで モデル7の作成を中断することになりました。
300Bアンプが完成しました。なかなか満足のいくものでしたが、依頼された友人との間の情報交換がうまくいかず 結局キャンセルになってしまいました。気を取りなおして作業場で聴くために使うことにしました。

その様なわけで再びマランツアンプの作成に戻りました。メインボードのCRを取り付けました。セレクターの ロータリースイッチ周りも配線して取り付けました。ブロックコンデンサーのボードも配線しました。トーン回路 も結線しました。ここで時間切れとなりました。あとは、信号線の配線とメインボードの配線で終了となります。 真空管をどうしようかと悩んでいます。東芝とTENの真空管を地道にヤフオクなどで集めてきましたので、TENを 使ってみようと思います。次回帰った時に完成できそうなので楽しみです。

だいぶん時間が経ちましたが完成しました。パフォーマンスは満足のいくものでした。 結局すぐに使用する予定がないので、ストックとして積み上げてあります。今回のものは上から2番目のものです。
その後ある方から譲ってほしいと申し出をいただき、少し整備していろいろなパフォーマンスをチェックすることにしました。 特性を調べる測器を最近一新しました。下図の左上はRIGOLというメーカーのデジタルオシロです。100MHz、1GSで4Chもありますが 価格が低価格であり評判が良いので購入しました。ファンクションジェネレーターもRIGOLのものにしました。 色々とチェックしましたが、これらの製品はかなりパフォーマンスが良いことがわかりました。大変満足しています。

まずイコライザー部分の特性がどうか調べました。結果を下の図に示します。 最初の図は増幅率の直線性です。入力信号が400mV以下ではかなり良好な直線を示していました。 傾きである増幅率は129となりました。利得にすると42.2 dBとなりました。測定条件は1kHzのサイン波を入力した結果です。

次に一番重要なRIAA特性を調べました。入力は2mVのサイン波です。青線がAチャンネルの結果であり、橙色のはBチャンネルです。 見やすくするために10dB下方に平行移動してあります。両チャンネルともよく揃っており、RIAA特性としても良好です。また、RIAAの他にOld78の特性も調べました。

次にリニアー増幅の部分を調べました。左側の図は1kHzのサイン波を入力したときの直線性の図です。 入力は2Vまで良い直線性を示し、増幅率は17.1でした。利得にすると24.7dBとなりました。NFBのβ回路の値はβ=4.7kΩ/(4.7kΩ+82 kΩ)= 0.054です。その結果 この回路の増幅率はおおむね1/βとなるので18.4と見積もらます。実測の増幅率が17.1であり比較的整合していると思います。中央の図はトーン回路の周波数特性です。 モデル7の説明書にある図とほとんど同じであり安心しました。抵抗やコンデンサーの精度が良いためだと思います。 右の図はカットフィルターの特性です。こちらも設計通りですが、オリジナルはコイルと抵抗およびコンデンサー を使った回路で構成されておりもう少しシャープなカッティングとなっていました。

ボリュームについては東京コスモス、バランスはアルプスのものを使っていましたが、セイデン製のL型アッティネーター用ロータリースイッチが 手に入りましたので、ボリュームはそれに変えてみようと思い立ちました。滑らかなAカーブとなるように抵抗を選びました。

金属皮膜抵抗で精度が1%のもので500kΩの抵抗を組んでみました。このロータリースイッチは接点部分が透明なプラスティックケースに格納されており ホコリや酸化などが抑えられて大変良いものと思います。ハンダつけしたのが下の図です。

出力抵抗を全抵抗で割り算したものが下の図です。予想通り滑らかなカーブとなりました。右図は左右の比較です。 かなり精度が高いことがわかります。作るときに抵抗のセレクトをすればもっと良い結果になったかもしれないと 少しだけ後悔していますが、作り直す気力はありません。今後新しいものを作るときはそうしたいと思います。

早速出来上がったアッティネーターをモデル#7の21に組み込んでみました。

音出しをしました。自分の駄耳では東京コスモスのボリュームとの違いは分かりませんが、つまみのクリック感はかなり良いです。 結局お譲りするという話が流れてしまったので、しばらく京都の自宅でメインのアンプとして使うことにしました。 そのうち時間が取れたら今まで作った別のクローンも特性などを測定したいと思っています。



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